ロシアとともに
「ロシアの魅力…ってなんですか?」唐突な問い。
「魅力」の響きに、今までにない質問への違和感のようなものを感じた。
何かがぼんやりと浮かんできた。
言語の響き、人のぬくもり、スローフード、自然、文化、ロシアで得たものすべて。ロシアから得た生活など…。
しかし、どうも満足してもらえる回答ではないようだ。
質問は続く。「ロシアってどんな街ですか?」
どこの街を指して?どこの街について?……広すぎる。
比喩的に「絵本に出てくるようなステキな場所だと思いますよ。」などと答えてみる。
ああ、ダメだ。この比喩は相手に何の事なのか伝わっていない。
「絵本に出てくるような…。」その世界を創り出す私の頭の中にあったイメージは、教会や美術館。しかも、歴史的建造物。その色合い。そして、その形。
…。街…。どんな街…?その答えが上手に言えない。
「教会などがきれいです。」と手短に終えた。
言葉や音楽が耳から入る芸術音とするならば、街並みや建造物は目から入る芸術品となる。建築もまた芸術…。街の雰囲気。人々が生活する建物。
街をつくる建物を見て感じるロシアの魅力をどう答えれば良かったのだろう…。
建物のなかで生活と結びつくのは教会だけではない。
住居をはじめ、普段通り何変わりなく友と歩いた通り沿いに並ぶ景色の中の商店。
公共施設。人々が生活を営んでいる住居。学校。仕事場。
どれもがさまざまなロシア建築様式がある。
様式がばらばらであっても、古いのもであっても、新しいものであっても、街は一つとなっている。
建築様式が時代・形・色彩をともなって視覚的に存在を強くうったえる。
魅力がある街…。ロシアの街…。
建物が立ち並ぶ。 そこに人が集う。 時が流れる。
変わる街。変わらない街。
時代とともに街は変化し、土地がキャンパスになり、人と時は歴史となって残る…。
立ち並ぶ集合住宅もソ連時代なごりかのように様式として街をつくり、今ものこりロシアの街を際立たせている。
坂道の途中…。ウラジオストクの学生寮でさえ……。
ロシアの魅力…。ロシアの魅力…。
それは…街か? それは…生活か?
人々か…?
いや、ちがう。
それは…。生きることなのかもしれない。
絵本ではない。童話の世界でもはない。
「生きること。」
魅力につながるすべてがある。