極東の窓

ロシア極東連邦総合大学函館校がお送りする極東情報満載のページ。
函館から、ウラジオストクから、様々な書き手がお届けします。

北方四島訪問交流事業に参加して

 8月15日、北方四島交流訪問事業に先立ち、根室にて行われた事前研修会に参加させていただきました。元島民の方や、元島民の2世3世の方々、政府関係者の方々が一堂に介し北方領土の歴史についてや領土問題解決に向けての講話を聞き、簡単なロシア語講座を行いました。会が進むにつれて、普段立ち入ることができない地に、私は本当に行くのだなと実感が湧いていきました。
 次の日、いよいよ私たち訪問団は今回乗船する「えとぴりか号」と対面しました。エトピリカとは根室半島や北方四島に分布している黒い体にオレンジ色のくちばしが特徴の海鳥で、船内のいたるところにエトピリカの絵が描かれていました。アイヌ語で「ピリカ」とは「美しい」の意味で、まさにその言葉通り船内は非常にきれいで設備も素晴らしく、この船で島に渡るのだなあ、と感動したのを覚えています。
 他の参加者の方々と挨拶したり、船内を探索しているうちに出航の時間となったのですが、船はなかなか出航できませんでした。何故かというと当日の根室の天気は悪く、湾の中でさえ風のせいで波がせわしなく揺れている状況でした。国後島や択捉島、そして海上の天気も良くなかったため、非常に残念でしたが、今回の訪問は中止となってしまいました。
 船に乗ればすぐそこに島があるのに、天候に阻まれ、近くて遠い場所という感じがしました。また機会があれば是非行ってみたいです。
 中止が決定した後、短時間ではありましたが船内にて参加者の交流会が行われ、元島民の方の体験談を聞きました。当時の島では、お金ではなく物々交換で生計を立て、魚が獲れた時も地域の人たちで分け合い生活していたそうです。島を追われた後、サハリンに移されたそうなのですが、そこで生きていくためにはお金が必要だという現実を突きつけられ、非常に苦労したというお話をされていました。
 今回は残念な結果となってしまいましたが、貴重な話や体験談を聞くことができてよかったと思います。根室に行ったのも初めてだったのですが、町の案内図や、看板にロシア語表記がされていて、ロシアと密接な地域だという事が一目で分かりました。短期間の滞在の間にも、ロシア人の漁師を見かけました。彼らにとっては根室は、重要な生活の拠点のようです。
 今後、領土問題が解決され、二国の人々が平和に暮らしていけるようになってほしいです。

ロシア極東連邦総合大学函館校 ロシア地域学科4年 鍋谷 真依