杉本侃客員教授による特別講義が開講されました
本校では、年に1回、杉本客員教授による特別講義「日ロ貿易論」を実施しています。
杉本先生は、東京外国語大学ロシア学科を卒業後、(社)ソ連東欧貿易会(現:ロシアNIS貿易会)、サハリン石油開発機構協力(株)に長年勤務され、さらに日本経団連日ロ経済委員会事務局長、ERINA(環日本海経済研究所)副所長などを歴任し、ソ連時代から現在に至るまでの長きにわたり、日ソ・日ロ経済関係、なかでもエネルギー問題の専門家として活躍されています。
さて、本年度の特別講義は6月3日(月)に行われました。
配布資料に従い、1.低迷続く日ロ貿易、2.ロシア制裁と輸入代替産業、3.領土問題を正しく理解する、の順にお話を進められました。
まず最初に、表「日ロ貿易の推移(億ドル)」を示しながら、リーマンショックの翌年(2009年)に激減しているが、それは国際資源価格が下がったためで、貿易量は変わっていない。その後上向くが、経済制裁の影響で2014年をピークに下降した。しかし、2016年を境に再び上向いてきている、などの解説がありました。
日ロ貿易では、表を見ながら、日本への輸入の七割が石炭・石油・LNGで絞占め、日本からの輸出は輸送機器で大半が占められている。自動車輸出のシェアは減少しているが、依然として56%(2018年)と多い。今後については、国際資源価格がどうなっていくか、これによって左右される。
欧米のロシアに対する経済制裁の行方が、ロシア全体の経済に影響を与えるだろう。他方で、米欧の制裁を受けたロシアが、どのように輸入代替政策を推し進めてきたかなどについて詳しい説明がありました。
後半は、「領土問題を正しく理解する」をテーマに、誰も書かなかった4つの論点について、詳しく解説いただきました。そして最後は、「日ロ間の領土交渉で最も大事なことの一つは、諸外国に、「日本は領土で容易に譲歩する」と意図的に解釈されない慎重な配慮が求められること。日本が得ることが出来るのは、〔本来2島〕だったと言う事実を、国民に対しても外国に対しても、理路整然と説明して誤解を招かない対応が不可欠である、とのことばで結ばれました。
今年もまた、ご自身が半世紀以上関わってこられた体験に裏打ちされた緻密かつ大胆な分析を交えながら、日ロ貿易関係について詳しく解説いただき、また北方領土問題にも言及していただきました。
学生は大いに刺激を受けて、講義時間終了後も列を成し、疑問点をぶつけていました。
ありがとうございました。