極東の窓

ロシア極東連邦総合大学函館校がお送りする極東情報満載のページ。
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ペテルブルク・モスクワ旅行記2

<2日目>
 サンクトペテルブルクの朝、時差ボケか4時ごろに目が覚めてしまう。朝食にも早いので、外はまだ薄暗いが散歩に出かける。今年の夏は異常に寒いそうで吐く息が白く、とても8月とは思えない。街行く人々はライトダウンやウールのコートにマフラーをぐるぐる巻きにした冬の格好だ。
 ホテルの前のアレクサンドル・ネフスキー大修道院に行ってみると、日曜日の礼拝のため、朝早いにも関わらずプラトーク(ロシアのスカーフ)で頭を覆った女性たちが多く訪れていた。
 
 それにしても寒い。ホテルに戻り、朝食会場に向かう。ビュッフェスタイルでアラディ(パンケーキ)やビーツのサラダ、キュウリやトマトの塩漬け、チーズなどロシア料理が多く並ぶ。

 この日は休日なので、学生3人とともに日本から申し込んだオプショナルツアーでペテルゴフとツァールスコエ・セローの見学に出かける。出発前、誰に聞いてもペテルゴフは絶対に見るべきと言われたので、とても楽しみだ。
 ホテルのロビーに昨日のガイド、リーヤさんが運転手とともに迎えに来てくれた。ツアーの料金は一人あたり18,800円と少々高めだが、値段の価値はあると思う。というのも、この頃は主に中国人を中心に団体観光客が増えたため入場制限があり、個人で訪れてもチケットすら買えない場合があるそうだ。それにガイドは必見のポイントを日本語で効率的に案内してくれる。
 車で1時間ほどでペテルゴフに到着。気温は上がり、空の濃い青が、緯度の高いところにいることを実感させてくれる。フランス式の上の庭園を通り、大宮殿の中を見学する。絢爛豪華なホールを次々と抜ける。大変混雑しているため立ち止まることは許されず、リーヤさんは年号や皇帝一家の名前、部屋の特徴などを何も見ずに早口の日本語でまくしたてる。すごい。

 大宮殿を出ると、眼下にはフィンランド湾に注ぐ大滝とそれに続く運河が。ピョートル大帝の命により作られたこの庭園には全部で150以上もの噴水があるというが、ポンプなど一切使わず、自然の高低差だけを利用し、噴出しているという。
 「いたずらの噴水」や「傘の噴水」など、人が近づくと水が噴き出す遊び心あふれる仕掛けがたくさんあり、とても楽しい。
 

 
 リーヤさんのおすすめという大きなアイスクリームを食べ、ツァールスコエ・セローへ移動する。

 エカテリーナ宮殿の見えるレストランでランチの後、宮殿内に入る。横に300mも広がる建物の大きさに圧倒され、細やかな装飾の美しさに目を見張る。

 中に入ってからも、天井まで届くほど大きな陶器でできたペチカや当時のままのシャンデリアなど、華麗な調度品に心を奪われる。

 そして大黒屋光太夫がエカテリーナ2世に謁見し、日本帰国の許可を得たという大広間。実際に見るとどこもかしこもキンキラキンで目もくらみそうだ。江戸時代の漂流民が日本に帰りたい一心でペテルブルクまでたどり着き、こんな豪奢な場所で女帝陛下に帰国を願い出るとは、いったいどのような気持ちだっただろう。想像するだけで涙が出そうだ。

 宮殿内はフラッシュさえ焚かなければ写真撮影は自由であるが、続く「琥珀の間」だけは禁止であった。第二次世界大戦時、ナチス・ドイツに壁ごと持ち去られ、2003年に復元された「琥珀の間」はさほど大きくはないが、四方の壁一面に琥珀が張りめぐらされた部屋など、ほかで見ることはできないだろう。しかしここが一番混雑しており、「早く出て!」という係の女性の言葉で、すぐ出て行かなければならない。
 リーヤさんによれば、ここ数年は日本人観光客が激減し、日本語ガイドにとっては死活問題なのだそう。代わりにビザなしで観光できる中国人がバス何台もで乗りつけるようになったため、リーヤさんも中国語の勉強を始めたが、日本人のガイドをした後に中国人のガイドは我慢できない、つまり日本人ほどマナーのいいお客さんはいないので、中国語の勉強はやめてしまったそうである。

 ツァールスコエ・セローは「皇帝の村」というその名のとおり、宮殿のほかにも美しく整えられた庭園の中に、エカテリーナ2世の食堂やお風呂など、別棟の建物が点在している。天気に恵まれ、建物のブルーやイエローといったヨーロッパ独特のパステルカラーが青空に映えて、一日いっぱいの散策もとても楽しかった。

 再びペテルブルク市内に戻る。街中のショッピングセンターで下ろしてもらい、ガイドのリーヤさんとはここでお別れ。夏休みで保養地に行っていた小学生の息子が明日帰ってくるの、と携帯電話の待ち受けでイケメンの少年の写真を嬉しそうに見せてくれた。大変お世話になりました。
 学生ともショッピングセンターで解散し、一人で夕食をとりにブリヌィ(ロシアのクレープ)のファストフード店“Чайная Ложка(チャイナヤ・ローシカ=ティー・スプーン)に入る。じゃがいもとキノコのブリヌィと、アクローシカという冷たい夏のスープにスメタナ(サワークリーム)を添えてもらい、207ルーブル(約400円)。
 ブリヌィは中の具がおかず風の物から甘いものまで様々選べるので、簡単な食事としては便利である。アクローシカも黒パンを発酵させた“クワス”というロシアの夏の飲み物で作るため、この時期に飲んでみるとよいでしょう。

ロシア極東連邦総合大学函館校 事務局 大 渡 涼 子