極東の窓

ロシア極東連邦総合大学函館校がお送りする極東情報満載のページ。
函館から、ウラジオストクから、様々な書き手がお届けします。

2018年を振り返って

 また一年が終わろうとしています。今年も「極東の窓」をご覧いただき、ありがとうございました。
 こうして一年を振り返ると、こんなこともあったなあ、こんなこともしていたなあ、と極東大学は学校という枠を越えた取り組みをしてきたことが、思い起こされます。
 昨年の暮れ、でき上がったばかりの2018年オリジナルカレンダーを携え、函館校から徒歩5分、函館山ロープウェイ山麓駅の中にあるFMいるかのオープンスタジオに出かけました。「暮らしつづれおり」という番組は、パーソナリティーの山形敦子さんご自身がアンテナを張ってたくさんのゲストを迎え、お話を聞いたり市内のイベント情報をお知らせする朝の生放送です。ちょうど番組の終わりの時間を目がけ、カレンダーをプレゼントして、2月のロシアまつりの告知をさせてもらおうと、出演の予約をしました。2018年のテーマは「ロシアまつり、二十歳」。20回目を迎えられたことへの感謝の気持ちを込めたオリジナルのラスクを市内の老舗パン店・キングベークさんに作っていただき、それを来場者にプレゼントする計画でした。
 試作品のピンク色のラスクを差し出して、「この色は何だと思います?」と聞いた私に、山形さんが口に入れる前に即答、「ビーツでしょ!」。実はこのラスクはボルシチに使われる真っ赤な野菜、ビーツで天然の色を付けたもので、あざやかなピンク色をしたものと、沿海地方産菩提樹のはちみつを使った薄茶色のものを混ぜて、めでたく紅白を表した記念スイーツでした。
 しかし、試食をしてもらった中で、この色がビーツであると気づいたのは山形さんただ一人でした。さすがですね、と驚く私に、えっへん、誰だと思っているの!と。
 山形さんは極東大学の公開講座「はこだてベリョースカクラブ」にも通い、何事にも興味深く、熱心に勉強する人でした。そんなことから、このベリョースカクラブをラジオでできないか?との提案を受け、「暮らしつづれおり」の中で「身近なロシア~ベリョースカクラブ・ラジオ版」と題したコーナーが誕生しました。2010年4月から2年間、毎月第3水曜日に放送しました。話し手は極東大学の教員に留まらず、ロシアを愛する人々が月替わりで登場し、ロシアについて語る15分のコーナーでした。次回はこのテーマでこの方はいかがでしょう、と私が提案すると、後はすべて山形さんが引き受け、上手にお話を引き出し、場を盛り上げてくださいました。その時の様子は、この「極東の窓」にも毎月掲載しました。
 今年の2月5日にロシアまつりのPRをすることで出演の約束をし、お別れしたのが山形さんとの予想もしなかった、永遠の別れとなってしまいました。
 何かお話ししたいことがあると山形さんの番組に出演させてもらい、好きなことをしゃべらせてくれた山形さん。私が最後に出演したのは、昨年市民訪問団を結成して催行した「2017ウラジオストクの旅」の帰国報告でした。極東大学のあたたかいサポーターのお一人でした。心からご冥福をお祈りします。
 さて、今年も函館校の学生たちの活躍が目立ちました。今年初めてのこととして、ロシア連邦文部科学省および交流庁主催によるロシア語学短期留学プログラムに3名の学生が採用され、モスクワのプーシキン大学で1ヵ月勉強する機会を得ました。ロシアの国民的詩人プーシキンの名を冠したこの大学は、外国人のためのロシア語教育の権威です。日本から80名ものロシア語を学ぶ学生が参加したというのも驚きでしたが、モスクワに1ヵ月滞在し、ロシアの古都群「黄金の環」の一つスーズダリを訪れるなど、中身の濃い充実した研修であったようです。
 また、日本ユーラシア協会北海道連合会主催の第50回全道ロシア語弁論大会Aクラスにおいて、函館校の学生が1位2位を独占しました。過去、2位3位や1位3位はありましたが、1位2位は初めてのことです。全道とは言え、出場者は東北や東京からもあり、学生の頑張りが評価されます。
 市内8高等教育機関による合同研究発表会「HAKODATEアカデミックリンク2018」において、チーム「ピロシキ八幡坂」の発表「オリジナルピロシキができるまで」がステージ部門で大賞、ブース部門でも審査員特別賞を受賞しました。ロシアでのピロシキの位置づけや歴史、日本に入ってきた経緯など、現地調査も踏まえ、極東大だからこそできるオリジナルの焼きピロシキを作ろう!をコンセプトに発表しました。その時は残念ながら試食を提供するまでは至りませんでしたが、“ピロ8”の活動はさらに続きます。検討中のピロシキが、2月9日(土)のロシアまつりおよび2月23日(土)、24日(日)に函館アリーナで開催されるはこだてフードフェスタ2018にて、いよいよ販売の運びとなります。
さらに、冒頭でご紹介したラスクが、今年は“ハチミツビーツラスク”として両イベントに登場します。前回は記念品だったため、2種紅白にしましたが、今回は一つになって色はピンク、味はハチミツです(残念ながら今回は沿海地方産菩提樹ではありません)。
 このほか、今回のロシアまつりでは、旭川市のお隣にある東川町およびJAひがしかわさんとコラボして、お米を使ったロシア料理をカフェで提供する予定です。ロシア生まれの電子楽器テルミンから派生したマトリョミンのコンサートも予定しています。何が飛び出すか、どうぞお楽しみに。
 こんなことも、あんなことも、山形さんがいたら楽しんで聞いてくれただろうな、と思うちょっとさみしい年末です。
 9月の胆振東部地震など、つらいこともあった今年ですが、みなさまに取りまして来年がより良い一年となりますよう。そしてまた来年も、函館校をどうぞよろしくお願いいたします。
               

ロシア極東連邦総合大学函館校 事務局 大 渡 涼 子

 
 △2015年のクリスマスイブ、FMいるかの開局記念番組で函館校を訪れた山形さん(左)