極東の窓

ロシア極東連邦総合大学函館校がお送りする極東情報満載のページ。
函館から、ウラジオストクから、様々な書き手がお届けします。

2015年を振りかえって

 いつも「極東の窓」をご愛読いただき、ありがとうございます。年の暮れにあたり、この1年を振り返りたいと思います。
 今年は函館校の学生が外に出て、目立った活躍をした年でありました。
 昨年から始まったJT奨学金による夏季休暇短期インターンシップ研修では、4名の学生が校内選考で選ばれ、サンクトペテルブルクとモスクワを訪れました。昨年よりも現地での訪問先も増え、モスクワの大学生との交流など、企業訪問に留まらない充実した内容で研修を終えることができました。
 11月に札幌の道庁赤レンガで行われた全道ロシア語弁論大会には、函館校から2名の学生が出場、2位と3位という優秀な成績を収めました。この二人はこれに先立って校内で開催されたАБВГ-Day(言語まつり)の1位と2位でありましたから、函館校の実力が全道レベルであるとの証しにもなりました。
 12月には北海道が道内の大学生を対象に主催した「未来のビジネスリーダー養成交流事業」というプログラムに1名の学生が参加。これは、北海道とロシアとのビジネス交流を促進するグローバルな人材を育成しようというもので、全道から70名の応募があった中、30名の選考に残り、函館からは唯一の参加でありました。ウラジオストク・ハバロフスク2都市を回るスタディツアーで、現地経済団体や企業を視察し、ヒアリングを行いました。
 この成果は来年2月に札幌で行われる発表会で報告され、極東に進出する道内企業とのビジネスマッチングも兼ねることから、今後、ロシア語を生かした就職につながるものと期待されます。
 函館校は少人数の学校です。大きなキャンパスもなく、函館という土地柄、他大学の学生と交流する機会も少ないのが現状です。そんな中でも、札幌や東京だけでなく、極東そしてモスクワへと、どんどん羽ばたいて力を付けて戻ってくる学生たちを見ていると、とても頼もしく心強く思います。
 総合学習や修学旅行で函館校を訪れてくれる小中高校生も多数ありました。ロシア人の先生とロシア語のあいさつを勉強したり、キリル文字で自分の名前を書いてみたり、民族衣装を着たり。未知の国・ロシアに楽しく触れる機会になればと思います。昨年に引き続き、という学校が多かったのは、このプログラムを気に入ってくれた証拠と、嬉しく思います。
 中でも函館盲学校の来訪では、最初は目の不自由な子どもたちに何をしてあげられるだろう、と不安になりましたが、そんな心配は無用でした。子どもたちは自らの楽しみを自らみつけて、マトリョーシカを開けて数の多さに驚いたり、サモワール(湯沸し器)を触って機能を確かめ、ロシア風のお茶の飲み方を覚えたり、文字通り肌でロシアを感じました。
 函館ハリストス正教会の協力も得て、貴重な聖書を特別に触らせてもらうなど、楽しい学習となりました。子どもたちにとってもよい思い出となったようで、後日手書きや点字のお礼状も届きました。
 悲しいこともありました。昨年末、函館校は開校20周年を盛大に祝いましたが、その祝宴で見事な歌唱を披露してくださった函館在住のソプラノ歌手・引地桂子さんが、9月に病気でお亡くなりになりました。引地さんは函館校のロシア語市民講座に通い、コンサートの前には教員から発音の指導を受けながら、熱心にロシア語の歌を歌われていました。合唱サークル「コール八幡坂」の学生のために、発声指導をしていただいたこともありました。
 クラシック歌曲のほか、歌声喫茶風のコンサートを開き、身近にロシア民謡を歌う機会を広めるなど多岐に亘る活動をし、そのような時には函館校から民族衣装をお貸しして、マトリョーシカのようなかわいらしい姿で歌っておられました。
 昨年の函館校開校20周年・函館日ロ親善協会25周年の会では、ラフマニノフの歌曲を素晴らしい歌声で披露し、祝宴に花を添えていただきました。あまりにも急で早すぎる死に、我々の心も深く痛みました。ご冥福を心からお祈りします。
 来年も、この小さな学校から大きな花火を打ち上げたい、そう願う年の瀬です。みなさまにとっても、よい年となりますように。

ロシア極東連邦総合大学函館校 事務局 大 渡 涼 子