2017ウラジオストクの旅 3
<2日目 午後>
ウラジオストクの駅前では民族衣装を着た女性が観光客との撮影に応じたり、州政府の政策に反対するデモが行われたりとにぎやかである。
駅舎の中を見学する。待合室はそんなに広くはないが、天井にはウラジオストクの名所と、モスクワのワシリー寺院やボリショイ劇場などの有名な建物が反対称に描かれていて、ここからシベリア鉄道でモスクワまで鉄路がつながっていることを象徴している。ロマンを感じる、とても好きな光景だ。
駅から中央広場に向かうと、週末だけの市場が開かれていた。ここでみんなとは解散して、それぞれに好きな方向へと進んだ。ドライフルーツや新鮮な野菜果物、魚まで売られている。日よけのテントがあるとはいえ、冷蔵設備もないまま並べられたこの魚は大丈夫なのか?とても生きが悪そうだ。
沿海地方のハチミツはとても有名で、種類も豊富。特にлипа(リーパ=菩提樹)の花のハチミツは香りもよく、クリーミーでおいしい。市場では量り売りで買うことができ、値段も安いので、おみやげに最適であるが、重たいので帰りにもう一度寄ることにする。
アレウツカヤ通りのカフェでランチをしてから、ドム・クニーギ(本屋)で本や文房具を買った。ニコライ2世凱旋門や潜水艦C-56博物館など海岸線を通って再び市場に戻り、先ほどのハチミツを購入。のどが渇いたのでクワス(黒パンを発酵させて作る微炭酸の飲み物)を買うことにする。
実は私は夏の盛りにロシアに来るのは初めてのため、タンク車のクワスを買うのはあこがれであった。クワスは夏の飲み物でペットボトルや缶入りも売られているが、このほうがおもしろそうだ。
コップに2杯ください、と言ったつもりだったが、おじさんはおもむろに1リットルの瓶を取りだし、タンクから注いで行く!これが2本も来たら大変だ。やっぱり1本でいい、と断り、その瓶を持ち帰った。クワスは甘くておいしいのだが、やはり1リットルは多く、帰国前日まで部屋の冷蔵庫にあった。
ホテルで一休みしたら、本日のメインイベント、マリインスキー沿海州劇場でのバレエ鑑賞に出かける。ここは2016年に、かの有名なサンクトペテルブルクにあるマリインスキー劇場の分館としてオープンした。ちょうどこの時、ロシアが誇る世界的指揮者ワレリー・ゲルギエフが芸術監督を務める国際極東祭が約1ヵ月にわたり開催中で、私たちは全員でバレエ「ジゼル」を観劇するのだ。
ホテルでタクシーを3台手配してもらい、黄金橋を渡って劇場に向かう。バスでも行けるようだが、街中をぐるぐる回るため時間がかかるのと、帰りの時間にはもうバスがないとの情報だったため、行きのタクシーに帰りも迎えに来てくれるよう頼んだ。タクシーは約束通りボンネットに「ヴェルサイユ」と書いた紙を掲げて迎えに来てくれた。
チケットは函館にいる時から買ってあった。マリインスキー劇場のホームページからクレジットカード決済で買うことができるのだ。ロシア人の先生方に手伝ってもらい、座席も指定して10人全員が一列に並ぶ席を取っていた。値段は席にもよるが一人2,000ルーブルほどなので、日本よりずっとお手頃に楽しめる。
日本でプリントアウトした、4人分がA4サイズの紙1枚におさまったチケットで本当に入場できるのか、実は少々不安であったが、そのまま窓口に出すと「切れ」とハサミを渡されたので、チョキチョキ切って各々に渡し、難なく入場することができた。
劇場は新しく、とてもきれいであった。開演まで時間があったので、ホワイエ横のカフェスペースでシャンパンなどを飲み、 “ロシアの劇場でバレエ鑑賞”という雰囲気を存分に味わった。
中に入ると大ホールは思ったほど大きくはなかったが、お客は満員であった。この日のソリストは中国遼寧バレエ団のバレリーナのためか、観客も中国人と思われるアジア系が目立った。バレエの出来を語れるほど詳しくはないが、手足の長いロシア人バレリーナたちを大勢従え、可憐な村娘を演じる中国人ソリストは見事であったし、他の踊り手たちも素晴らしい技巧で何度も何度も拍手が起きた。
国際極東祭は今年2回目だそうで、ウラジオ市内でもたくさん看板を見かけた。プログラムにはゲルギエフが指揮をするオーケストラやオペラもあり、演奏者は中国・韓国・台湾のほか日本からもピアニストの辻井伸行氏が参加していたようだ。これもプーチン政権が極東開発に力を入れていることの一端であろう。
劇場から出るとすっかり日も暮れ、今度はライトアップされた黄金橋を渡り、ホテルまで戻った。夕食をとり損ねたので、ホテルの向かいにあるお店でプロフ(炊き込みご飯)とビネグレット(ビーツのサラダ)を買い、部屋で食べた。
今日も満足の一日であった。(つづく)